■令和3年簡易生命表から平均寿命を確認してみる!
突然ではありますが、厚生労働省は2022年7月29日、2021年分の平均寿命と平均余命が記載された令和3年簡易生命表を発表しました。その内容を見てみると興味深い結果となっています。
<令和3年簡易生命表の概況>
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life21/index.html
このデータを見てみると令和3年の男の平均寿命(0歳の平均余命のこと)は 81.47年、女の平均寿命は87.57年となり前年と比較して男は 0.09年、女は0.14 年下回りました。平均寿命が前年を下回るのは、東日本大震災の影響を受けた2011年以来となっています。
しかし、世界的に見れば、男女ともに世界一の平均寿命となり、長生き大国となります。
厚生労働省の分析では、男女とも悪性新生物<腫瘍>、肺炎、交通事故などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働く一本で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いているとのことでした。
今回はこのような寿命が以前と比較すると、長寿命となり、住宅との向き合い方も変わっていくものと考えております。
■今後の不動産は「その選択が間違いだった」とならないような判断が必要!
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、世帯数のピークは来年むかえます。総人口に遅れること約20年経過したタイミングとなります。単身世帯の割合は2020年の35%から40年には39%に高まる予想となっています。大幅に増えるのが独り暮らしの高齢者です。13%から17%になる予想です。その割合は6世帯に1世帯の計算となります。
それとは逆に夫婦と子供で構成する世帯の割合は26%から23%に下がる予想です。確実に進行するこれらの変化を抜きにして、これからの住まいのあり方は論じられません。これから住宅購入をされる方は、このような世帯構成の変化をよく理解して、不動産と向き合っていただきたいと思います。
人口や世帯の動向とともに住宅市場の鍵を握るのは地域性となります。都市圏と地方都市、また過疎の町村を一緒くたにはできません。コロナ禍で広がった、地方移住も選択肢を間違えると、「その選択が間違いだった」となる事も考えられます。また、増え続けている空き家問題もあり、長生きにより、住宅との向き合い方も考えなければなりません。
■そもそも日本の住宅事情はどのように変化してきたか?!
日本人は一般に持ち家志向が強いと言われています。戦後、政府は公的な賃貸共同住宅の提供に注力し、1955年に日本住宅公団(現・独立行政法人UR都市機構)を発足させ「不燃・高層・間取り2DK」の3点セットを備えた団地を、都市圏を中心に大量供給してきました。
団塊の世代が社会に出始めたのは高度成長期の後半であり、各地から東京郊外などに移り、世帯を構え、子育てをする場として公団住宅は存在感を発揮しました。しかしその後、住宅政策は持ち家重視の政策に回帰しました。バブル経済が崩壊した90年代初めからリーマン危機を経て今にいたるまで、累次にわたる経済対策のメニューには住宅ローン優遇策が必ずと言っていいほど入っており、今も続いています。
その恩恵を受けたのが分譲住宅を供給するハウスメーカーやマンションデベロッパーであり、今もその影響力は不動産購入をする際に必ず目にすることとなります。テレビCMも多い事から、日本の住宅事情は、このような大手中心に広がってきました。
しかし、日本全国の空き家は2018年時点で約850万戸となり、毎年、増え続けていく状況を見て、住宅との向き合い方も変えていかなければなりません。野村総合研究所は2028年には1500万戸程度に急増する可能性があるとの試算を発表しており、このような状態が続くと、現在、不動産を所有している方の資産デフレを起こしかねません。そもそも相続した家に住まない人が増えていることや長寿化がこのような空き家を増やす結果となっています。たとえば90歳で死亡した親の家を相続する息子や娘は60歳前後が一般的となり、この世代はすでに持ち家に住んでいる事が多く、相続物件は放置される事となります。このような繰り返しで、空き家が増える結果となっています。また、所有者が複数となると、相続物件の処分も難航することになります。
■これからの住宅購入は「独り暮らしがし易い」住宅?!
2040年に向け急増するのは独り暮らし高齢者の住宅需要となります。内閣官房に設置されている全世代型社会保障構築会議は5月の中間整理で「住まい確保は老齢期の生活維持にとっても大きな課題になる」として空き家活用を含めた制度整備を日本政府に促しました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/index.html
政権が高齢者の住宅問題を強調し始めた背景には、年金の実質価値の下落を補う役割を住宅政策に求めたいという願望が見え隠れしています。しかし現状は賃貸住宅に住む国民年金の受給者数や実態さえ政府は把握しきれておりません。
一方で人びとの新築志向は薄れつつあると言われています。最近では新築とは違った価値観を中古住宅購入の際のリノベーションで新たな価値に転換した住宅に興味を持つ消費者も増えています。人口動態がストック重視への政策転換に切り替わるタイミングで今回は「長生きにより住宅の概念が変わる?!」というテーマで解説を行わせていただきました。
今後の参考にお役立ていただければ幸いです。