そもそもマンションの「玉突き」とは?
現在、東京都内の分譲マンションは約181万戸あり、全国の3割を占めるようです。このうち築40年以上の物件は2013年時点で約13万戸でしたが、
23年には3倍の約43万戸に急増する見込みであり、特に1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた老朽物件は首都直下地震などが発生した場合に
倒壊してしまう危険性が高く、建て替えが急務となっています。
ちなみに東日本大震災の際には甚大な被害が発生した宮城県仙台市内の旧耐震マンションにも被害が出ていました。
つい先日にも東北地方で津波注意報が発令される地震が発生しています。
どのタイミングで発生するかわからない首都圏直下型地震を考慮すると、このような動きになるのは不思議ではありません。
今回の玉突き建替えとは、不動産会社が老朽マンションを買い取れば、別の場所に建てるマンションの容積率を上乗せするというものです。
マンションが衝突する事故ではありません
買い取った物件の跡地にマンションを建設する場合にも、別の老朽物件を買えば容積率を積み増す事ができますので、
企業主導で旧耐震基準のマンションを建て替えが出来るようになります。
結果、人口と老朽化マンションを多く抱える東京都においては災害に強い都市を目指すことにもつながりますので、一石二鳥のような制度に思えます。
しかし、問題なのはこのような政策が進むと地方や駅から離れた物件はまったく開発が進まず、放置される可能性が出てきます。
中心部は繫栄しているものの、それ以外の地域には廃墟となった建物が並ぶといったような光景になってしまう可能性も否定できません。
この制度でどう変わっていくのか
老朽マンションを買い取った不動産会社などが周辺で居住者の転居先にもなるマンションを開発する際に、
容積率を上乗せでき、通常より分譲戸数を増やせるため収益が増えます。
(玉突き建替えで企業の再開発へのやる気を高めてもらうという狙いが伺えます。)
結果、企業が建て替えに参入しやすくなり、老朽化マンションの建て替えが進まない現状を打開するきっかけになりそうです。
買い取った老朽物件は解体し、跡地で新たなマンションを開発してもらうことを想定しているようですが、
跡地の新マンションも周辺の別の老朽マンションを買い取れば容積率を緩和できるようになり、
マンションが合併し巨大コミュニティの形成が起こりうるかもしれません。
複数の老朽マンションの建て替えが玉突き建替えで進むようになることも想定しているようです。
この玉突き建替えでは老朽物件を周辺の一定エリア内で建て替えることを想定しているようですが、
不動産会社が新規物件を開発しやすく、資産価値の高いエリアに特化していく事が予想されます。
勿論、このような政策が進む際に、一番重要な事は本当に建て替えが進むのかどうかです。
そもそも、老朽マンションの建て替えは費用負担や工事中の仮住まいの確保など課題が多く、入居者の話し合いだけで合意するのは難しいのが現状です。
老朽化したマンションでは管理組合の機能が低下している場合や、すでに機能不全に陥っている可能性も存在しています。
現実ではこのような問題が存在する以上、今回の制度が機能していくのかどうかも気になるところです。