■耐震、制震、免震
地震に対する建築技術は耐震だけでなく「制震」「免震」という考え方もあります。
制震構造だから(免震構造だから)安心ですというような表現がなされます。
技術的な観点だとやはり長くなるので、建築基準法における位置付けだけを説明しますが、日本の建築物はまず耐震ありきの考え方です。
ですから、制震構造だから(免震構造だから)安心ですという謳い文句の物件は、耐震性は当然ながら基準を満たしていて、それに加えて制震(免震)で安心です、というメッセージになります。
ここで注意点なのですが、制震については既存建物でもリフォームで対応できるということです。
流石に制震用の部材を取り扱うメーカーや工事業者も、前述の耐震性が前提であることを踏まえて提案すると思うのですが、「耐震性は悪いまま制震だけで効果を期待する」のは間違った判断なのでご留意ください。
非常に稀なケースではありますが、地震被害を謳い文句に、実際は効果の乏しい金物などを高額で販売する、所謂リフォーム詐欺が社会問題になった時期があります。
耐震性をないがしろにして制震だけを殊更にPRするのはおかしな主張であり、大きな地震被害の後など、こういった悪徳業者が横行しがちなので、一応覚えておいて損はないと思います。
■耐震性に乏しい住宅でも売買できる
中古住宅を検討する上で一番重要なのが、耐震性に乏しい住宅は売買してはならないという法律はありません。
不動産事業者が買い取って再販する物件でも、売主である不動産会社が耐震性を担保しなければならない法律ではありません。
つまり売りに出ている物件だから耐震性は大丈夫なんだろうという思い込みは全くの間違いです。
実際の不動産取引では、重要事項説明書に耐震診断書の有無について記載する項目があり、耐震診断書がある場合はその内容を説明しなければならないとされています。
言い換えると、良かれと思って耐震診断を実施してしまうと、売主側に説明する義務が生じ、また、それを理由に「買わない」という判断を誘発してしまう恐れがあるため、ほとんどの取引で耐震診断書の項目は「なし」とされるのが実情です。
つまりは住宅の耐震性については買主側が気にしなければならないテーマだということです。
不動産取引の現場で、売買契約を締結するまで耐震診断などは実施できないと主張する不動産会社がいますが、冒頭に記載した通り、旧耐震物件は耐震性を確認するべきであり、2000年5月以前の木造住宅も耐震改修の可能性がある、つまりは耐震改修費用を想定して予算を組む必要があるので、購入判断材料にするべき情報であり、こういった重要情報が軽視されてしまう取引なら、その物件の購入を取りやめることも含めて、本当に買っても良いかを慎重に検討した方が良いです。
ちなみにこういう書き方をすると売買は怖いな、と思われるかもしれませんが、耐震については賃貸も同じです。
新築だけは建てた事業者が責任を負わなければならない法律なのですが、中古を検討する時点で、買主は耐震性について気にしなければならないのは事実なので、甘い謳い文句で判断を誤らないよう注意したいものです。
最も住宅の耐震性は重要な購入判断材料ですので、普通の不動産会社であれば、頼まなくても説明してくれます。
これだけ地震被害が懸念される状況において、住宅の耐震性を軽視する姿勢の事業者は、それだけ質の悪い仲介会社であるとも言えますので、事業者選びの判断材料の一つとしても、耐震性をないがしろにしないことについてご留意いただければと思います。